意識と無意識のはざま

綺麗じゃなくても言葉を紡ぐ

色づく

いつぶりだろう。

私の世界に,言葉と音楽が戻ってきた。

 

はじめましてと,おかえりなさいの混じり合った4月。

 

 

新しい日々が始まった。

新しい肩書を得て,新しい仲間と出会い,新しい場所に根を張った。

 

ずっと,守られた居場所を求めて漂い続けていたのかもしれない。

自分だけの机を手に入れ,真っ先に本を並べた。

何度も読んだ大好きな本。

いつか読もうと買っておいた本。

大好きな先生にもらった本。

憧れの先輩に借りた本。

私のよき理解者が勧めてくれた本。

勇気を出して買った本に,衝動買いした本。

一冊一冊,いろんな思いが詰まった本を,黙って並べた。

 

本棚には「その人」自身がよく出るものだ,と思っている。

私は,私という存在を構成するものを躊躇うことなく並べられる場所を得た。

これ以上に幸せなことがあろうか。

 

熱い珈琲を淹れて,チョコレートを齧りながら,来る日も来る日も偉大なる先達の言葉に向き合い,沈思し,こころの奥深くの景色をそっと覗く。

ふと目を上げると,窓の外では新芽が伸びている。

春だ。

 

今年に入ってからずっと,おそろしく本が読めなかった。

どういうわけか文字情報が頭の中に入っていかず,そもそもページをめくる気も起きなかった。

今はきっと本を読むべき時ではないのだ,と自分に言い聞かせていたのだが,その予感はあながち間違いではなかったようだ。

ここ1ヶ月で少しずつ,人の言葉を正面から受け止めたり,自分の言葉を生み出したりできるようになっていった。そんな気がする。

それは心のゆとりゆえなのだろうか,それとも環境が整備されたからなのだろうか。

いずれにしろ。

 

おかえり,言葉たち。

いつだって言葉は,完全にこころを映せない。だからこそ,紆余曲折も含めて愛すべきものなのかもしれない。

 

 

ここ最近,どこに行くにしても何をするにしてもイヤホンが手放せなくなった。

ほぼ空っぽだったスマホのミュージックアプリに,たくさん音楽を詰め込んだ。意外に思われるかもしれないが,こうやって音楽を持ち歩くのはおそらく中学生ぶりだ。

 

私にとって音楽は,「守られた居場所」から最も遠い場所に位置していた。

自分の中の一番見たくないところに直面せざるを得ない,神聖で,畏怖すべき,悪魔的存在。

ぐちゃぐちゃになったプライドや自尊心の残骸の上に仁王立ちして笑っているような。

 

嫌いになったわけじゃなかった。

ただ,弱虫でボロボロでダメな自分を見たくなかっただけ。

 

春,新しい季節。

4月は新しいはじまりに溢れている。

私もそうして,生まれ変われたのだろう。

 

おかえり,音楽。

大好きな曲たちが,私の毎日を彩っていく。純粋に愛してみてもいいと思えた。

 

 

まっすぐな道を歩く,2年間が始まった。

自由を手にした僕らはグレー,だけれど,白黒つけられない混沌とした毎日を少しでも彩って,縁どって,生きていこう。

 

 

やっぱり,春が好きだ。

少しずつ,世界が色づいていく。

 

 

 


「崩落」歌ってみた Ver.しゃむおん 中文字幕